ISO9001の業務に十数年かかわった登録審査員(補)が、自分の意見を前面に出した Q and A です。


Q.ISO9001とはなんでしょうか?


A.ISO9001とは、マニュアルや手順書に従って製品を作ることで、品質を一定水準に保つことを保証する仕組みです。

特徴として、認証機関という第三者組織によって、マニュアルに従って製品が作られていることを認証してもらう仕組みになっています。

同じ仕組みとして環境に配慮するISO14001があります。

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Q.ISO9001で作られた製品は絶対安全ということ?


A.残念ながら、そんなことはありません。

「ISO9001取得」というのは、自社規定の製造方法は守っている、という事でありそれ以上のことではありません。

ただ、自社規定のルールは、常識で考えて、現状の法的なルールより厳しいのが普通です。ですから、ISO認証の工場で作ったものと、非認証の工場で作ったものを比べると、認証の工場の製品の方が消費者にとって安心感があるのは当たり前です。

でも、雪印乳業の事件でもあったように、「ISO認定」であっても、消費者の期待を裏切ることになることはあるのです。

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Q.では、なぜISO9001を取得する必要があるの?


A.取得は、その企業の経営者が「ISO9001を取得するぞ」と思ったから取得するのです。
誰かから強制されるものではありません。
が、現実は「取引先に言われたから」とか「親会社に言われたから」ということも少なくありません。
しかし、そんな場合であっても「わが社としては、こうしたい」という目標を持たないと、いい結果につながりません。

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Q.ISO9001を取得してメリットがあるの?


A.メリットは、その企業がISOを取得したいと思った時の動機によると思います。たとえば、「業務をマニュアル化したい」とか「組織を見通しよくたい」とか。

そんな動機なくして、メリットは何か?と問われても答えに困ってしまいます。

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Q.日本はもともと高品質じゃないの?そんなもの必要?


A.ISO9001が広まったきっかけとして、2つあったと思います。

1つは、EUとの貿易で(特にイギリス)、ISO認証でないと、取引に不利になるような状況になった。そこで輸出中心の大企業に広がっていったのです。そこから、日本国内の中小企業に広がっていくのです。

2つ目は、デフレ不況。日本の経営者は「日本的なやり方はダメだ」「これからは海外を見習わないと」「国際化を目指す」という風潮があったと思います。
なんだか解んないけど、現状がダメだからISO9001というものを導入してみるという、行き当たりばったり的な事もあったでしょう。

ここからは、完全に私見ですが、日本にとってISO9001というのは、「鬼子」のようなものだと思います。あまり歓迎されない運命を背負っているのではないでしょうか?
日本は「失われた20年」といわれるデフレ不況を解決策を、ISO9001に求めてしまったところがあります。しかし、マニュアル化⇒大量生産や、マニュアル化によって、正社員から、契約社員・パートにシフトを可能にしたかもしれません。

人件費を抑制したい経営者側の立場だと、それがISO9001の成果だと言うこともできるでしょう。

しかし以上の事は、デフレギャップをさらに加速します。それが日本にとって幸せなことかどうか私にはわかりません。

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Q.ISO9001っていろいろあると聞いたのですが


A.執筆時点(2014年8月)時点運用されているのがISO9001:2008年版です。
これは2008年に制定されました。この前が2000年版。 
次期改定予定が2015年です。
また、品質マネジメントシステム−基礎と用語というのがISO9000:2005です。、
ISO 9004:2009(組織の持続的成功のための管理方法-品質マネジメントアプローチ)というのもあります。

とりあえず、一般的に言われているISO9001は、その時点で認証機関が「ISO取得」に使用する文書だという認識で間違いはないでしょう。

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Q.ISO9001の本家はイギリスなの?


A.確かに現在のISO9000シリーズが1987年に制定されるとき、その文書のもとになったのは英国規格(British Standards)です。
でも、そのもとになったのは、MILスペック(米軍の調達仕様)です。

しかしISO9001の中には、日本の「改善活動」の魂があると思います。私的には本家は「日本」と思っています。

ISO9001=アメリカ的大量生産 + 質を落とさない(日本的改善)の仕組み

です。

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Q.ISO9001のはこれからどうなるの?



A.どうなるか私ごときにには判りませんが、第三者が品質の保証を行う(第三者監査)の必要性は、下がっていくと思います。
なぜなら日本の場合、品質の低下は消費者や取引先が敏感に感じ取り、取引の停止になってしまうことは、よくあることです。

品質の判断は認証機関よりシビアでしょう。

と書けば、ISO9001自体が不要かと思ってしまいますが、PDCAサイクルや是正・予防の仕組みは必要です。

ISO9001は認証の為でなく、実行のために必要なのです。

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この質問に答えた人

沼田欣朋(JRCA A05924)